〜燐のお手紙〜
先週、宮城の作業場にお客様がいらっしゃいました。
その方へお手紙を書きます。
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【2020年6月5日】
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遠くから宮城県の惺々舎の作業場までいらしてくださり、ありがとうございました。
あなたに会えて、本当に嬉しかったです。
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時間も限られていて、話すことのできなかった想いを、ここに綴ろうと思います。
読んでもらえるかな?
読んでもらえたら、嬉しいです。
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女大工が訪ねてきてくださると聞いて、楽しみにしておりました。
それも、電話で問い合わせをいただいてから2日後に早速来てくれました。
その行動力、決断力には驚きました。
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あなたは、ログハウスを建てる大工でした。
私たちと同じで、木が大好きなんですね。
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お話を伺っていて、私よりも先輩のあなたは、
女で大工をやるということに関して、ずっとずっと苦労されて来られたんだなぁと思いました。
それでも、その道を今までやり通してきたということに、あなたの意志の強さと、好きなものに対する強い想いを感じずにはいられませんでした。
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あなたがおっしゃっていた、
「日本人は家に対する想い・意識が低いと思う。」
という言葉。私もそう思います。
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私はオーストラリアへ行って、様々なホストファミリーのお家に住まわせていただきました。
その中には、あなたが教えてくださったご夫婦のように、
自分たちで何年もかけて少しずつ、自分たちでつくり上げた家も何軒かありました。
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あなたの話を聞いて、その時の彼らの話を思い出しました。
材料も、身近にある土や石や木を採掘、収集し、住みながら、まず小さな小屋から・・・
「この家を建てる時も、ウーファー(WWOOFでお手伝いをする方)に手伝ってもらった」
「最初は、本当にこの小さな一部屋しかなかったんだ」
うまくいくことばかりでなく、多くの困難もあったことなど、
その時の話は聞いていてとても興味深かったのを覚えています。
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建てるまでのそのプロセスは、彼らの大切な思い出となり、
それは、その家に対する愛着に深くつながっていると感じました。
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私たちが毎日過ごす家に、どんな材料が使用されているのか?
どんな建て方で、誰がどんな思いで建ててくれた家なのか?
その家を建てる際には、どんな困難があって、どのように乗り越えたのか?
もし影響を与えているとしたら、その家は周りの自然環境に対してどんな影響を与えているのか?
私たちがいなくなった後、この家はどうなるのか?
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このようなことに意識が向くことは、今はなかなか難しいですね。
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こう言う私も、東京では団地住まいだったこともあり、
そんなことは考えたこともありませんでした。
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でも最近、これらのことが、私の気がつかないうちに
少しずつ、少しずつ、私の感じること・考えることに影響を与えていたのかもしれない、
と思っています。
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芳香剤や柔軟剤の香りではない、その家の匂いを嗅いで、
この香りはなんだろう?木かな?
とか、
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壁にある傷や、柱に残っている大工さんや建具屋さんの目印を見つけて、
あぁ、この家を建てた大工さんがいたんだ。どんな大工さんだったのかな?
とか、
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屋根葺きの時に余ったのであろう、近くに積まれている瓦を見て、
あぁ、これが屋根に載ってるんだ。結構大きいんだなぁ。
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など、おばあちゃん家で過ごしていた時に思ったことがあります。
当たり前のようなことでも、ふとそう気づくことって意外と大切なのかもしれないなぁと。
あまりにも家について無頓着で生きてきたので、そう思ったりします。
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でも、よく考えてみると、
家は、毎日過ごす場所です。
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毎日食べるものと同じで、毎日その空間で息をして、時間を過ごします。
毎日その壁を見ます。
毎日その床に座ります。歩きます。
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そんな、私たちに一番密接な場所である家です。
インテリアや家具などの内装は自分好みにアレンジしますが、
その家自体、その建物に対しては、どうしてこんなに意識が向かないのでしょうね。
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私は神社やお寺の、凛とした空間が好きです。
ただ、そこに座っているだけでも心地よいです。
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それって、その空間の構造、建物が、昔の建て方だからだと思うのです。
お施主様のこと、周辺の環境のこと、材のこと、そこを使われる方達のこと、神様のこと、未来のこと・・・
”みんなが一番良いように”
という想いで建てられた結果だからかなぁと思うのです。
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だから、内装だけでなく、家の構造や材料や、その家を建てるのに携わる人達も、実はすごく大切なんだと思います。
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ログハウスも、なかなか経営が難しいという話の中で、
「作り手は良いものを作りたいと思うから、どんどん赤字になってしまう」
という話がありました。
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職人はみんなそうですよね。
経済や効率優先では考えれらない。だから、今の世の中ではとても生きづらいし、余裕のある生活はできません。
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あなたは、少しずつではあるけれども、世の中の価値観が変わってきているような気がするとおっしゃりました。
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安くて簡単で便利なものから、
→見えないけれど価値のあるもの
→お金では買えない大切なもの
→心身が本当に心地よいと感じるもの
→私たちを生かしてくれている自然を思いやるもの
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の方へと、徐々に変わっていっていると私も信じています。
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「日本の気候風土に合った家」
「昔の日本人のように、自然を大切にして、自然と共に暮らしたいと願う人に合った家」
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それはやはり、昔ながらの日本家屋であるということを、
あなたと共有できて嬉しかったです。
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今は、そのような日本家屋に住み、生活する機会を持たない方も多いということ。
これは、なんとかしなければいけないと感じています。
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長くなってしまいましたが、最後に。
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ブログでも書きました通り、私は親の反対を押し切って今見習いをしています。
一年経ちましたが、相変わらず自分のできないことやダメなところを思い知らされる毎日です。
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できなくて、怒られて、辛くて、
「大工になる」と豪語きったのは良いですが、
実際にそれをやることは、覚悟はしていましたが、大変で、
自分には無理なのではないかとか、
自分には向いていないのではないかとか、
恥ずかしながら弱気になることも実はあります。
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でも、20年以上女性で大工をやり続けてきたあなたにお会いして、
やっぱり、大工がいいと思えました。
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素敵な考えを持ち、紆余曲折ある中で、自分が選んだ生き方をしてきた方達の家づくりに、
大工として携わりたいと思いました。一緒に、良い家をつくりたいと思いました。
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「応援している」
と言ってくれて、ありがとうございます。本当に、励みになります。
あなたに恥じないように、またお会いできる日を楽しみに、
日々の修行を頑張ります。
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遠くから、本当にありがとうございました。
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燐
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