女子大生がなぜ大工!? その二

私は大学卒業時、

自然が喜ぶような仕事を探していました。

人間の文明のために多く犠牲にされてきた植物や動物、大地や海が

少なくとも今より悪化することのないような生き方をしたい

それに通じる職業・仕事で

私ができることはなんだろう

そのヒントを探しに、

オーストラリアへ行きました。

WWOOF(ウーフ)とは、

有機農家であるホストと

お手伝いをするウーファーを結ぶNGOです。

金銭のやり取りなく、

「労働力」と「食事と宿泊場所」を交換する仕組みです。

私はこのWWOOFに参加し、

オーストラリアの主に南部

メルボルン周辺とタスマニアのオーガニックファームで

農業体験をさせてもらいました。

今回は、そこでの体験を紹介したいと思います。

・・・

卒業後すぐ出発したので、

時期は4月です。

南半球は北半球にある日本と季節が逆なので、

冬へ向かうころでした。

収穫の時期から少し外れてしまっている中で、

快く私を受け入れてくれたステイ先の方達には本当に感謝しています。

彼らはとても穏やかで、優しく私を受け入れてくださり、

たくさんのことを教えてくれました。

メルボルンはとても大きな都市だなあ

到着後の第一印象です。

移動には地下鉄やトラム(路面電車)を利用します。

思いっきり走り回る楽しそうな犬たちに会える、芝生が美しい大きな公園や

市内をゆったりと流れるヤラ川沿いは心地よいお散歩コースです。

一方で、

図書館、美術館、高層マンションやホテル、バーやお店も充実しています。

一見、農家は見当たりません。

どこまでも続く草原と

野生のカンガルー、コアラを想像していた私は少し驚いてしまいました。

ですが、

少しバスで移動すると、広く青々とした草原と

ワイン用の葡萄畑が見えてきました。

あぁよかった。

私にはやはり、こちらの方が落ち着きます。

ホスト先のファミリーは、

食や環境について意識の高い方たちばかりでした。

除草剤の代わりに、羊に草を食べてもらいます。

化学肥料の代わりに、羊や鶏の糞や家庭から出る生ゴミを土に返します。

農薬の代わりに、毎日優しい声をかけてあげます。

お互いに無理はなく

気持ちの良い生き方だなあと思いました。

食と環境だけでなく

教育や国際情勢についても関心が高い方が多いような気がしました。

彼らは、情報源に対しても

これは正しい情報、

これは誇張されすぎている情報、

と言うように精査しているようでした。

テレビやネットの情報の多くを

鵜呑みにしてしまいがちの私には、

その姿勢はとても大事だなと勉強になりました。

日本の教育、原発、

また現行の政府などについて

私はどう思うか意見を尋ねられました。

正直、私がきちんと自分の意見を話せたのは

教育のことだけでした。

オーストラリアでは

シュタイナー学校へ通うことや、

学校へは行かず家で勉強するホームスクーリングを行うことは

より一般的な選択肢のようでした。

原発に関して、

事故後の原子力発電所が現在どのような状況なのか

放射線の量はどこまで減ったのか

処理方法で問題になった廃棄物はどこにあるのか

避難所での生活を強いられた住民の方達は家に帰れたのか

私は何も知りませんでした。

事故当時のことも、

テレビで放映される衝撃的な津波の映像ばかり印象に残り、

現場では実際どのような状況だったのか

何が起こっていたのか

本当のことは、何も知りませんでした。

自分の国のことを決めていく政府についても、

自民党がどのような方針で政策を進めているのか

今までに何を実行してきて、

それによって社会は好方向へ向かっているのか

どのような法案を通そうとしているのか

私は何も知りませんでした。

目の前の生活がそれにより大きく変化した

という実感が今までなかったので

自分にはあまり関係がないと思い込み、

詳しく政治関連の情報を集めたことがありませんでした。

だからこそ

自分の意見も持てません。

それが、とても恥ずかしく感じました。

彼らは特に原発の問題に関して、

日本人よりもシビアに考えているように思えました。

自然と近い生活をしている農家なので

当然のことかもしれません。

日本へ旅行しようと思っていたけど、

原発の事故があったからやめたよ。

そういう夫婦もいました。

小学生くらいのお子さんがいる家庭で、

夕食時、週末のクリケットの試合の話をするように

政治の話をしていました。

私は家族と政治について話し合う

ということがなかったので少々驚いてしまいました。

でも、大事なことだなと思いました。

結局、私一人が環境を守りたいと声を張ったところで

できることは限られ、大きな自然環境を変えることはできません。

世界や国、企業など

より大きな影響力のある機関が

人や経済のことだけを考え

環境に対して何の配慮もしなかったら

自然はどんどん失われてしまいます。

知らなきゃいけないことはたくさんある。

そう感じました。

どのステイ先のファミリーも、

暮らしの中に自然を取り入れた暮らしをしていました。

そして、自然との繋がりを大事にしていました。

瞑想やヨガなどを

生活の一部にする方も多くいました。

静かに目を閉じ、

鳥のさえずりや風の音を聞き、

大地と自分の接触面を意識し、

空気が自分の肌に当たっていることを感じる。

いつもは意識しないけれど

すぐそばにある自然を感じようとする時間は

とても穏やかで、

心に充実感を与えてくれました。

その他にも、

毎食、少量でも必ず自分の畑で採れたものを食べる

生ゴミはコンポストで肥料にした後、土に返す

水は浄水した雨水を利用したり、近くの湖から引いてくる

太陽光によって温められたお湯を利用する

環境汚染の原因となる洗剤や石鹸は使用しない

家電製品は使用しない

などのことを実行していました。

それらの生活は決して面倒でも大変でもなく、

とてもナチュラルで居心地良い暮らし方でした。

農場を案内してくれている時でした。

柵にいたカマキリを手のひらに乗せ、

そっとキスをしたお母さんの光景はとても美しかったです。

虫も動物も植物も土も木も

彼ら彼女らにとってはみんな家族なんだ

そう感じた一瞬でした。

優しく育てられたオーガニックの野菜や果物は

どれもとても美味しく、幸せになりました。

日本に興味を持ってくれている方もたくさんいました。

長寿の国としてその食生活である和食はもちろん、

神道やアミニズムなどの信仰について、

武士道、お茶や浮世絵、歌舞伎のこともご存知でした。

自然食中心のマクロビオティックや

「何もしない」

という福岡正信さんの自然農法の英訳本をステイ先の本棚で見つけました。

日本の本だよ

そう言われて驚きました。

日本にだって私が知らないだけで

自然や食に対して深く考え、

行動している人たちがいる。

そしてその理論や考えが海外でも認められ、

参考にされている。

同じ日本人として嬉しくなりました。

あるファームの知り合いで、

日本がとても好きだという男性にお会いしました。

彼は何度も日本に訪れたことがありました。

タスマニアで大根やわさびなどの日本の野菜を作ってみたり、

田んぼ作りや豆腐作りに挑戦したりするほど日本が大好きでした。

日本人である私でさえ

豆腐を作ったことも、作り方も知らないのに・・・!

彼は農家目線で見た日本を私に教えてくれました。

砂漠が年老いて死んでしまった土だとすると、

日本の土はまだまだ若く生き生きしているんだ。

活火山の噴火活動で土が攪拌され豊かな土壌になるからね。

国土はそんなに広くはないけれど、

標高の高い山々もあって、生育する植物や動物の種類も多様。

北海道から沖縄まで日本中どこでも

種を植えれば芽が出てくる

というのは普通ではなくすごいことなんだよ。

オーストラリアは半分以上が砂漠で、

そうでない地域も土が悪くて樹木も長くは生きられない。

樹齢100年以上の木が育つ日本は土が豊かな証拠だよ。

4つのプレートの上にあること、

海に囲まれた島国であること、

降水量の多い気候風土、

はっきりとした四季、

これらはいくつもの偶然と奇跡が重なってできたものなんだ。

日本は自然環境にとても恵まれている

羨ましいよ

と言ってくれました。

加えて、彼は料理が大好きでした。

味噌や納豆などの発酵食品、

漬物や干物の長期保存のための工夫など

日本人が昔から行ってきた食の知恵をとても賞賛してくれました。

彼の話を聞いて、

なんだか嬉しくなりました。

日本に生まれたことは、

とても幸せなことだったんだ

そう思うことができました。

彼との出会いは、

日本と日本文化を見直す大きなきっかけとなりました。

オーストラリアの空の広い開放的な田舎で、

太陽の日差しで目を覚まし、鳥のさえずりを聴いて起きる。

動物たちに「おはよう」と挨拶をして

毎日土に触り、その多様性に驚き

豊かな恵みを与えてくれる大地に感謝しながら

自然の香りを身体いっぱいに取り入れる。

気持ちの良い汗を流した後は、

さっきまで太陽、水、土から栄養を与えられていた野菜や

ビネガーに漬けられて旨味や栄養が凝縮された夏野菜を美味しくいただく。

温かいハーブティの香りで心身をリラックスさせ

無数の星と天の川を見上げ、虫の声と共に眠りにつく。

私の心と身体はとても満たされていました。

穏やかに、全てのものに対して

感謝の気持ちが湧き上がってきました。

自然を大いに味わうことのできる五体満足の体と感覚器官がある幸せ

そんな私をこの世に産んでくれた両親と家族が生きているという幸せ

日本にいるだけでは感じることのなかった幸せを

素直に感じることができました。

自然豊かな日本に生まれたことが

何より一番幸せなことかもしれない。

日本のことを学びなおそう。

私の子どもや孫、その先の世代にも

日本に生まれた幸せを感じ、

その素晴らしい自然に感動してもらいたい

今よりももっと豊かな自然とともにあり、

その自然と共に、

美しく繊細な文化や知恵を生み出してきた昔の日本人。

そんな古の日本人について学び、

何世代にもわたって洗練されてきたその技術を継承する仕事

それは、自然と対立することなく上手に共生する社会にきっと繋がる。

私の探していた答えは、

自分の生まれた国の

少し振り返ったところにありました。

生き生きとした大地と

未来の可能性が溢れている伝統文化のある日本に

私は帰ってきました。